目と芽、鼻と花、歯と葉、耳と実(み)、頬と穂(ほ)。顔
と植物の各パーツが、まったく同様の音を持つ言葉で呼ばれて
いるのは、偶然だろうか?
万葉学者の中西進氏の説によれば、これらは語源が共通して
いるからだと言う。漢字にすれば、まったく別の言葉のように
見えるが、古代の日本人は、顔のパーツも植物のハーツも、
「め」「はな」「は」「み」「ほ」と同じように呼んで、同じ
ようなものと考えていたようだ。
たとえば、鼻は顔の真ん中に突き出ている。同様に「花」も、
植物の枝先の先端に咲く。そして岬の端も「はな」と呼ぶ。薩
摩半島の「長崎鼻」がその一例である、さらに「かわりばな」
「しょっぱな」「寝入りばな」など、物事の最初を表す意味も
持つ。
「からだ」とは、幹をあらわす「から」に接尾語の「だ」がつ
いたものである。「から」が植物にも使われた例は、稲の茎の
「稻幹(いながら)」、芋の茎の「芋幹(いもがら)」などの
言葉に残っている。
古くは手足のことを「枝(えだ)」と呼んだ。「手」「足」
と呼び分けるようになったのは、奈良時代あたりからである。
もう明らかだろう。我々の先祖は、植物も人体も同じものだ
と見なしていたのである。すべては「生きとし生けるもの」な
のだ。こうして古来の大和言葉の源を辿っていくと、古代日本
人の世界観が見えてくる。
このシリーズは続きます。
記:とらのこども
■リンク■
a. JOG(318) 国語の地下水脈
日本人の感性を磨いてきた名文を暗誦すれば、生きる力が湧いてくる。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h15/jog318.html
1. 中西進『ひらがなでよめばわかる日本語』★★★、
新潮文庫、H20
http: //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101348510/japanontheg01-22%22 entryBottom
▲ by toranokodomo | 2011-07-30 18:36 | 日本の歴史