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転載:巨大停電 その時何が起こるのか(その3)

  前号、前々号よりご覧ください。





> (3)その時何が起こるのか



> 先の12月9日(金)の出来事は「たかだか火力発電所1機」だが、その火

> 力発電所1機が風邪を引いただけで、冬の寒いさなか、日が暮れて明かり

> を灯して夕飯準備をする真っ最中に、いきなり東北地方全体が停電とな

> る可能性が有ったわけだ。



> 火力発電所の点検・維持には万全を尽くしていても、何事も「絶対」は

> 有り得ない。そして順調に動いていた機械が、何らかの拍子に躓く事は

> 十分に有りうる。そのために電力会社は十分な余裕を持つようにしてい

> る。



> しかし、当時の東北電力にはその余裕が全くなく、他でも動いている火

> 力発電所1機が一つでも躓けば大停電、という大変な危機にあった。



> 幸い、この時は元々予定されていた「東京電力から最大30万kW」の全国

> 融通(その他北海道電力からの融通有り)に、急遽40万kWを積み増して

> 東京電力から融通を受ける事で、何とかこの危機を「残り余裕代」54 万

> kWで乗り切った。(注1.2.参照)



発表資料によると、東京電力から追加で12月9日(金) 15時30分から21時

00分まで最大40万kW、合計70万kW、北海道電力から最大40万kW(10万kW

の追加)の融通を受けて、停電を回避することができました。



> しかし、「たかだか火力発電所1機」躓いただけで、東北全体がいきなり

> 危機的状況に陥る構造は今も続く。しかも、東京電力にそれだけの余力

> がなければ、応援が間に合わない可能性もある。真冬は北電からの送電

> は困難である。



> もちろん、東北電力の被災した各火力発電所は復旧に努めているようだ

> が、大地震後9ヶ月経過して復旧できない箇所が少なからず。それがこの

> 冬の間にどれだけ復旧できるか、かなり疑念がある。つまり、東北全体

> にわたって、多数の連鎖事故に発展し、2-3ヶ月の史上最大の停電にな

> る可能性も否定できない。(注4.参照)



東北電力の場合、東日本大震災の被害のみならず、7月の新潟・福島豪雨

による水力発電所の被害も甚大でした。最大出力142.1万kWのうち、2011

年12月6日時点で復旧しているのは18.6万kWであり、13.1%が回復してい

るに過ぎません。まだ123.5万kW分が動いていません。



http://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1183639_1049.html



なお、ブラックアウトが起きた場合、前述したように設備が壊れる前に

停止状態になりますので、2か月も3か月も連続的に停電状態になるとい

うことはありません。さらに、そうなることを避けるために、3月に行な

われましたが、地域を順番に強制的に停電する輪番停電が行なわれるで

しょう。



> (4)寒冷地地方の停電は生死に関わる



> この春先などで計画停電に見舞われた関東地方の方には「停電ぐらい、

> 何てことはない」と考える人もいるだろう。



> 確かに照明が消える程度ならば懐中電灯で対応できるが、冬のさなかの

> 東北地方で停電が起きると、暖房が一斉に止まるのが最大の脅威である。



> 現在、東北地方の一般家庭でもエアコン暖房が普及しつつあるが、灯油

> ストーブもまだまだなくてはならない存在だ。



> しかし、特に豪雪寒冷地では強力な暖房が必要となるため、『石油ファ

> ンヒーター』など灯油を燃やしていても、ファンや制御などで「電力が

> 欠かせない」石油ストーブの方が遙かに多い。また、換気も考えれば、

> 電力を使った換気扇(換気装置)も必要だ。



> 東北地方に住む知人によると、昔ながらの「暖房に電力を全く使わない

> 『だるまストーブ』や『反射式・対流式ストーブ』」が見直されている

> が、震災直後から品薄で入手困難との事。



> 冬の寒冷地で暖房が失われたら…、凍死者が多数出る恐れがある。



私、今でも許せないのは、原発の事故の直後、NHKに登場した「専門家」

が、「放射性物質が室内に入らないようにエアコンを切って下さい」と

全国放送で言ってしまったことです。非常に無責任です。



皆さんご自宅のエアコンを見ていただければ分かりますが、外気と換気

するエアコンは例外的で、ほとんどのエアコンは室内で空気を循環させ

ています。



ですから、原発周辺地域でエアコンを止める必要はほとんどありません

でした。大規模なパッケージエアコンは換気をしている可能性がありま

すが、風向きを考えれば止める必要なんかありません。



この無責任な一言のために特別養護老人ホームでエアコンを切り、入居

者の老人が低体温症に陥って死亡する危険性がありました。実際、死亡

された方もいるのかもしれません。放射線被害と低体温症とどちらが危

険か、「専門家」が専門馬鹿である好事例です。



NHKのニュースで南相馬市の特養の悲惨な状況が伝わり、思わず電話番号

を調べて電話をかけ、エアコンを動かすように説明しました。応対され

た所長が「そうですよね!」とほっとされた声を上げたのが、今でも忘

れられません。



>  (5)現下の東北地方の危機を救うのは、関東地方・首都圏の節電し

> かない



> 少なくとも、東北電力の各発電所が復旧するまで、東北地方電力供給の

> 残る切り札は東京電力の余力の融通しかない。(注1.5.参照)



> もちろん、東京電力でも電力需給は非常に厳しい状態が続く。しかし

> 「残り余裕代」が「たかだか火力発電所1機」のトラブルで失われるもの

> か否か。そして、その影響の違いは多数の人命に直結するか否か、大き

> な違いがある。



> 「関東地方、特に首都圏の節電」が「東北地方の電力危機」、それにか

> かる「東北地方の人命を救う最後の命綱」である事を、ここに強く訴え

> る。



これはその通りです。首都圏の節電で余剰電力を東北電力に回す必要が

あります。しかし、電力を融通するのは東北だけではなく、関西電力や

中部電力向けになる可能性もあります。



しかし、東京電力も現在稼働中の柏崎刈羽原子力発電所の5号機と6号機

が来年春までには定期検査で停止し、そのまま再稼働できないでしょう

から(245.6万kW分)、今夏の最大供給量の約5%が失われます。



すると、来年の夏は首都圏もまた輪番停電になる可能性があり、東北電

力等に融通する余裕もなくなります。



下記資料は、日本の送電網を説明した資料です。



http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/05j033.pdf





> 注



> 注1.詳細は平成23年12月 9日付け東北電力プレスリリース「能代火力

> 発電所1号機の運転停止と電力融通の追加について」参照



> 注2.12月9日(金)17時30分時点で、東北電力内の電力需要(使用量)

> は1224万kWに対して、電力供給能力は1278 万kWであった。



> 注3.この際、送変電・発電設備を損傷させる前に停電を厭わなければ、

> それからの復帰は数日もかからない。しかし、少しでも躊躇して送変電

> ・発電設備を損傷させてしまった場合、その修理には数ヶ月から年単位

> の時間が必要となる。



> 注4.詳細は平成23年12月 11日付け東北電力プレスリリース「新仙台火

> 力発電所1号機の発電再開(試運転)について」他参照



> 注5.詳細は平成23年12月 9日付け東京電力プレスリリース「東北電力

> 株式会社への電力融通実施について(12月9日)」参照



>                    (在京電力ジャーナリスト)



最後になりますが、この記事に対してこんな投稿がありました。



> 4)頂門の一針 2461号  11・12・13(火)に掲載された「日本の電力

>  巨大危機」に関して小田原三茶様にリクエストがあります。



> 公開されているデーターをフォローするだけで、日本は原発がなくとも

> 電力需要に対応が出来ることが明らかになると主張する人たちが居りま

> す。小田原様もご承知だと思います。



> もし彼らの主張が間違いならば、具体的な根拠を挙げてその間違いをご

> 指摘頂けませんか。



> 私のような素人では、原発が必要なのか?それとも原発を即刻無くして

> も大丈夫なのか?さっぱり分かりません。(奥中 正之) 



私から答えますが、この投稿の中で私が書いた関西電力の状況を良くお

読み下さい。原発が止まるということは電力供給量の余力がなくなると

いうことです。いつブラックアウトが起きるか分からないようになる訳

ですが、そのような状況をお望みですか?



原発の代わりに風力や太陽光発電があるなんて言う、孫正義を筆頭に能

天気なことを言っている輩が大勢いますが、原発と同じ面積で安定的に

電力を供給できるシステムでは全くありません。



例えば、東京電力と川崎市は2011年8月11日に、川崎市臨海部に建設して

いた「浮島太陽光発電所」を稼働させましたが、原発1基分の面積で最大

出力は0.7万kW、片や原発は100万kW以上の出力のものがあり、単位面積

あたりの出力で比較になりません。しかも、出力が全く安定していない

こと、以下のページのグラフをご覧ください。原発の代替には全くなら

ないのです。



http://blogos.com/article/18759/



風力発電も似たように不安定です。特に日本は風力発電不適地で、何が

いけないのかというと台風の存在です。台風の時には風車を止めなけれ

ばなりません。また、冬の落雷で倒壊した事例もあります。



そもそも小田原様が言いたいことの趣旨も、電力供給量の余力がないこ

との深刻さについてだと思います。


 


 


by toranokodomo | 2011-12-17 17:13 | 指定なし  

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