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転載 「ロシア・北方領土返還へ」

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 

     平成25(2013)年1月25日(金曜日)

        通巻第3866号  




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 野心家プーチンは対日政策を劇的に変える可能性がある

  その兆しは三島返還なる奇策だが、長期戦略はもっと大きい

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 帝塚山大学名誉教授の伊原吉之助氏が大胆な予測をしている。




 サンクトペテルブルグを建設したピョートル大帝のように、プーチンは歴史に名前を刻む行動に出るだろう、とするのが前提にあって、プーチンの対日政策は「北方四島ばかりか、全千島・南樺太を返還し、首都をモスクワからウラジオストクに遷都し、シベリアと極東を大開発、発展させる」。となれば、アジア・太平洋時代にふさわしく、日ロ親善がロシア外交の要になる、と未来の地政学展望を伊原教授は空前の想像力と規模で予測される(『国民新聞』13年1月25日号)。



これは初夢か、大風呂敷か?

プーチンは「独裁」の印象が強くなってロシア国内での人気が陰っているが、かといって他の国々の指導者とは比べものにならぬほど高い人気がある。その決断力はどこかの国の政治家が爪の垢を煎じて飲むべし。



彼は本来のニヒリズムを薄くて怜悧な笑いの風貌に貯める一方で、自作自演によるイスラム自爆テロをはかり、チェチェンの過激派の所為だといって残酷な戦争を仕掛けた。

ところがロシア国民は、この汚い戦争の側面を無視し、プーチンを強い指導者だと認識した。



第一にプーチンは権力の源泉が何ものなのかを知悉している。情報機関出身だけに、諜報と謀略は政治目的達成の一手段であり、浮ついたポピュリズム政治などを嗜んでいたら、ある日、国民が失望すれば、あとは権力の座から引きづり降ろされるだけである。



権力に裏打ちされたポピュリズムは情報操作にもよるが、政治のパフォーマンスでは満足できない、リアル・パワーが要求される。プーチンはそれをやった。中国の歴代皇帝より凄まじい遣り方だった。





▼政治家の凄みを持つ指導者の巨像と実像と虚像



第二に権力を行使するときは大胆不敵、迅速さが求められ、政敵の裏を掻き、政敵を時としては葬り去る必要が生まれる。

木偶の坊のようなメドベージェフを傀儡に使いながら、プーチンはまず情報機関を駆使して本当の政敵だったホドルコフキーを政治的に葬った。冤罪をでっち上げて獄につなぎ、その資産と石油ガスのビジネス・コネクションをもぎ取った。これを目撃した新興財閥は野党への資金援助を辞め、アブラモウィッツは英国へ逃げ、ほかのオルガリヒも欧米へ逃げ、プーチンの政敵はむしろ旧共産党くらいである。



第三にプーチンは、共産主義とは絶縁した政治家であることを示すためにもロシア正教会とは異様なほどの熱い接近をはかり、重要な儀式にはかならず正教会司祭を招待して、国民の宗教への篤実な帰依傾向を是認し、国民の大半を安心させた。



第四にプーチンは本気でシベリア開発を狙っているのだ。

2012年APEC会場を強引にウラジオストク開催と決め、同時にプーチンは極東開発大号令、ウラジオの無人島を開墾し、橋梁を架けて繋ぎ、ここをAPEC会場としたのだが、爾後、ウラジオストクに多くの西側企業誘致に成功した。鉄道駅、ハイウェイ、空港の近代化とともに工業団地を造成し、ついには自動車工場も稼働を始める。




プーチンが極東開発を急ぐ理由は明確である。

極東シベリアからロシア人の人口が激減している反面で中国人移民が肥大化し、各地のチャイナタウンが、すでにロシアにとっての脅威となっている。プーチンとしては目の前の中国の脅威を希釈させるには、その背後にある日本との外交・貿易、投資関係を強いモノにする必要がある。そのための呼び水ならばとシベリアのガスの対日供給を開始した。



第五にプーチンは表面的な演技ではなく、芯からの親日家なのである。国策としての反日と個人の日本趣味はもちろん、異なるが。。。。最初、NHKの小林記者がプーチンに招かれて長時間取材した折に、柔道を披露したときは誰もが演技と思った。ところがプーチンは嘉納治五郎を崇拝し、かれがのこした格言を座右にしていることが判明、後日、森嘉郎元首相ら複数が同じことを確認した。彼は柔道家であり、その柔道の精神が日本武士の精神にきわめて近似することを知っている。



そして本気で日本との外交関係を樹立するには、大きな障害がふたつあることを知り抜いている。言うまでのないが北方領土問題の解決と、日本人のシベリア抑留と満州侵略への遺恨を和らげることにあり、そのために何をするべきかを知っている。国内政治事情があるとはいえプーチンの一存で決められる課題は幾つかある。




歯舞・色丹の二島返還でなく、国後択捉の一括返還、いや全千島列島の一緒に返還するとなれば、日本はロシア・ブームに沸く可能性がある。史上始めって以来、珍しく戦争に依らないで戦争で奪取した領土を返すのだから。



極東沿海州からイルクーツクまでの東シベリア開発に日本の協力は不可避的になる。ロシアはそのバランスによって中国の脅威を軽減することが出来る。したたかに政治計算をすれば、上の方程式が導かれるだろう。



 そして、もしプーチンがこのような観測気球を高らかに打ち上げたとき、日本は千載一遇の機会として、活用する実力があるか。



 現在、森嘉郎元首相の打ち上げた三島返還論に喧しい批判がまき起こっているが、歴史の構想力を考えて、大胆に対応したいものである。中国の軍事的脅威を背後から均衡させる最大のパワーは、プーチンのロシアが握っているのである。


 


「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 

     平成25(2013)年1月25日(金曜日)

        通巻第3866号  




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by toranokodomo | 2013-02-02 20:00 | 指定なし  

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