許されざるもの

 辻原登さんの小説で「許されざる者」という作品がある。

このなかで、主人公の夫人が質問を受ける。
質問をしたのは、戦争に旅立つ直前の凛々しい甥である。

「叔母さん、いま、しあわせですか?」

夫人はなんてことを聞くのだろうと思いつつ、今までの結婚生活を頭のなかで考える。
ぐるぐるぐると思考を巡らす。この子は、あのこと、このことを知ってるのだろうか。

そんなことも考える。いや、知っているはずはない。

しあわせなのですか、という問いを、
思いがけず、戦地に赴こうとしている甥から突きつけられて、

夫人ははじめて、
これまで一度も、結婚生活の幸不幸について自覚的でなかったことに気づいた。

でも、世間でおこなわれている結婚生活なんてみんなそんなものじゃないかしら?
とつぶやく。

だけど、わたしの別の選択が許されていたとしたら、
つまり、もし、結婚前にあの方と出会っていたら。。。。

夫人の心の動きは奇怪である。

彼女は、もしを過去という時間においているつもりだが、

じつは未来の中で考えているのである。

だからこそ、胸がこんなにときめくのだ。

(中略)

それに気づいたとたん、夫人はこれまでに抑えこまれていた
ひそかな願望を直視せざるを得なくなった。

記:とらのこども


 


 


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by toranokodomo | 2014-01-26 14:05 | 恋愛、女性  

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